恐怖 DUSTER
「私のおかげ・・・?」

弥生は自分が電話をした事により、麻美が心を取り戻せたことが理解できない。

「そう、弥生のおかげ・・」

「弥生がクリスマスの日に電話をかけてきた時、新しい私の心は記録の存在でしかない弥生に対して冷たい反応をしたわ」


「でもね、感情を無くして新しい弥生の心の奥底に封じ込められた私の元に弥生の声が届いたの」


「私の声が届いたの・・・?」

「そうよ、届いたのよ。そして弥生の声が無くした私の感情も取り戻してくれた」

「最初は驚き恐怖したわ!だって、目覚めたら何も見えず何も感じない真っ暗な場所だったから」

その時の麻美の恐怖は誰よりも理解できると弥生は思った。


「あの真っ暗な場所に私の声が届いたの・・・?」


「そうよ、はっきり弥生の声が聞こえたわ」


「もっと驚いたのは、弥生と話しているのが私と知った時だった」


「どうして、私が弥生と話をしているのかその時は理解できなかったけど、私はただひとつの事を願ったの・・・弥生に会いたいってね・・・」


「私に会いたかった・・・?」


あの時の電話の相手をしていた麻美の口調からは弥生は想像する事もできなかった。


「新しい心の私は、弥生に素っ気無い言葉を話してすぐに電話を切ってしまった」


・・・そう!たしかにあの時の麻美の口調で、私は麻美に嫌われていると思ってしまった・・・

「あの電話によって弥生は傷ついたと思ったわ」


「えっ!そんな事は・・・」


そう言いかけて弥生は言葉を詰まらせた。


・・・私は、あの時に傷ついたのだろう・・・?


・・・あれいらい麻美の事を考えるのが辛くなり忘れようとしていたから・・・


弥生の暗い表情を見て麻美は強い口調で言った。



「私ね!その日からずっと新しい私に対して怒りと憎しみを思い続けていったわ!」



「真っ暗な場所の恐怖よりも強く深くね!」



「そして、徐々に私の心を取り戻してやったのよ・・・」



「恐怖の感情を使ってね・・・」












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