恐怖 DUSTER
「麻美、どうして私は完全に消去されなかったの?」



「たぶん、あの事故のショックがなんらかの影響を与えたんだと思う。」


「おそらく・・・私の母の死が弥生の心にも傷をつけてしまって、弥生は無意識にその記憶を新しい弥生に奪われる前に心の奥底に封印していたのね、そして記憶を奪いつくされた後にその封印した記憶が蘇ったのよ・・・」


「でも・・・私は、あの暗闇の場所にいた時も麻美のお母さんの死は思い出さなかったよ?それどころか麻美や自分のことさえも・・・」


「それは無理も無い事よ・・・」


「無理も無い・・・?」


「そう、無理なのよ。封印されたのはあなたの心が恐ろしくて悲しいと感じた心の欠片なのだから・・・」


「心の欠片・・・」


弥生は自身の胸に手をあて、あの時の自分の記憶を思い出していた。


「あっ!でも私、あの暗闇で意識を取り戻してから何度もお母さんに助けを求めて読んだよ?」


「それは、封印されていた恐怖の思いの弥生の心が、新しい弥生の心に消去されているあなたの存在に気づいて、自分を維持するためにほんのわずかだけ消去されている7歳までのあなたの心を吸収したんじゃないのかな?」


「その吸収できた記憶にお母さんの記憶がほんの少し残っていたのだと思う・・・」


「で、でも・・・」


弥生の言葉を制すように麻美は言った。


「弥生、お母さんを呼ぶときお母さんの顔をイメージできてた?」


麻美にそう言われて弥生は言葉を失った・・・


「私・・・あの時・・・お母さんの顔も解らなかった・・・」





弥生はあの時自分が7歳までの弥生の心の欠片であった事を自覚した・・・
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