恐怖 DUSTER
「でも、その欠片が弥生を存続し続ける事ができたのよ」


「話しがだいぶそれちゃったわね?戻すわね」


「私が、新しい自分の心に記憶も体の主導権も奪われていた時に、弥生からの電話で意識を取り戻したて事は言ったわよね」


弥生は麻美を見つめながら無言でうなずく。


「それから、私はあの暗闇の場所から考え続けたのよ」


「どうして、私はこんな何も見えない、何も感じない場所にいるのか・・・?」


「そして、聞こえてくる自分じゃない自分の声の主は何者なのかと」


「あの暗闇の場所に捕らわれてから二年ぐらい考え続けたわ」


・・・二年も?・・・


麻美の言葉に弥生は驚いた。


「ねぇ、麻美は怖くなかったの?あの暗闇の場所に捕らわれていて」


「欠片だけの存在だった私でも恐怖と悲しみで必死にお母さんに助けを求めたりしたのに・・・」


麻美は遠くを見つめ、感情の無い冷めた声で答えた。



「心はまだ壊れたままだったから、怖いとか悲しいという感情が無かったのよ・・・」



麻美は子供のような笑顔を弥生に向けて言った。



「だから冷静に考え対処する事ができたのよ」



「新しい心に気づかれずに自分を取り戻す方法をね・・・」



「自分を取り戻す方法・・・?」



「そうよ、言ったでしょ?恐怖という方法でね・・・」



そう笑顔で言い放つ麻美の瞳には、まるで魔性の力が宿っているように光り輝いていた。
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