恐怖 DUSTER
どんな人間にも恐怖を感じる事がある。


怖い映画やテレビを見たとき。


自分が嫌う存在の生き物に突然遭遇したとき。


人に対しても状況によって恐怖を感じる・・・


新しい心の麻美も記憶を受け継ぎ存続してから幾たびの恐怖を感じていた。


恐怖を感じていくたびに、消去できずに心の奥底に封印した麻美に記憶と力を与えていったのだ。


そして徐々に封印されている麻美が恐怖を与える事ができるようになっていき、新しい麻美の精神を壊していったのである・・・


「不思議な事にね?新しい心の麻美が恐怖に襲われていくたびに、私は自由になれる感覚になっていったの」


「楽しかったは、私から全てを奪った者がもがき苦しむさまを見続けていくのは」


屈託の無い笑顔で話し続ける麻美に、弥生は少し恐怖と疑問を感じる・・・


・・・麻美は、新しい心の麻美に対して別の感情があるのではないか・・・?


バスの中で助けを求めたのに、その麻美の願いを無視して逃げ出して行った乗客達への憎悪も新しい心の麻美にぶつけたのではないだろうか・・・?


おそらくその強い憎しみにより麻美は入れ替わる事ができたのだろう。


そう思う弥生の心に新たな疑問が生まれた。


・・・自分は、どうして入れ替われたのだろう・・・?


・・・自分には麻美のような強い憎しみは無かったはずだ・・・?


・・・たしかに、あの暗闇の場所に捕らわれ絶望と悲しみから生まれた憎しみは存在していたし、新しい心の弥生も恐怖を感じる事は多々あったはずだが・・・



・・・私は、何もできなかった・・・?



・・・ならば何故?今日私は入れ替わる事ができたのだろう・・・?



「どうして、私は入れ替わる事ができたの・・・?」




弥生が思わず声にした言葉を聞いて、麻美は意味深な笑いを浮かべた。
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