恐怖 DUSTER
そう言い終ると同時に麻美は笑いだした。


麻美の笑いが何を意味するのか解らない弥生は驚いた。


その弥生の戸惑いに気づいた麻美は言った。


「あっ!ごめんね。思い出したら可笑しくて」


「実はね。麻美が自分の名前を言った瞬間に麻美と私の心が入れ替わってしまったのよ!」


「えっ!」


「驚いた?そうよ、あなたの時と同じ状況を、私は先に経験していたのよ」


「私の場合は、あっけなく簡単に入れ替わったのよ」


「だから、私の思惑ではあなたの入れ替わりもすんなり行く予定だったの」


「だけど、思った以上に弥生は自分の名前を言わなかったから本当に焦ったのよ」


「あのままタイムリミットが来たらあなたは弥生に吸収されて、自我は消去されてしまっていたのだから」


「タイムリミット?」


「そうよタイムリミット。あなたが生まれた時間のことよ」


「私が生まれた時間?その時間がタイムリミットなの?」


「いやだな!記憶して無いの?今日はあなの誕生日じゃない」


・・・私の誕生日・・・?


弥生は慌てて自分の記憶を確認し自覚した。


・・・そうだ!今日はたしかに私が生まれた日だった・・・


「弥生、思い出した?自分の誕生日を忘れないでよね」


「前の弥生の記憶にも残っていたはずでしょ」


「本当に、時間が迫って来た時には生きた心地がしなかったんだから!弥生の後ろにいたあなたの感覚が消えて行った時には思わず泣いちゃったんだから」


麻美の言葉で弥生は全てを理解した。



あの時、弥生を必死に呼ぶ声は本当は自分に向けられていたという事を。



「あの時ね、意識が無くなりかけたんだけど麻美の声が聞こえたの・・・」



「戻ってきて!という声が・・・」



「あの声で意識を取り戻し目覚めたら・・・」



「私・・・弥生ちゃんと入れ替わっていた・・・」
< 71 / 190 >

この作品をシェア

pagetop