恐怖 DUSTER
「ところで、弥生と麻美は今どこにいるの?」


千恵の問いに弥生は辺りを見回し言った。


「いまいるとこ?え~と・・・?」


前の弥生の記憶がまだ完全に吸収されていないのか、弥生は自分がいるところが何処なのか解らなかった。

弥生が考え込んでいたら、携帯の向こうから千恵が言った。


「あっ!ちょっと待って!二人がどこにいるか当ててみせるから」


「えっ!」


「う~ん・・・弥生と麻美はいま川沿いの桜並木を歩いているね」


「えっ!」


弥生は驚いた!自分達がいる場所はたしかに川沿いの桜並木なのである。


「ど、どうして解るの?」


「解るのよ!入れ替わった私にはね」


「い、入れ替わったから!」


千恵と話している弥生が動揺しているのを感じた麻美は弥生に問いかけた。


「弥生、どうかした?」


「あ、あのね千恵が、いま私たちがどこにいるかを言い当てたのよ!」


弥生の驚きに何事かと心配した麻美だったが、訳を聞いて呆れ顔になっていく。


そして麻美は無言で向かい合う弥生に手を伸ばし人差し指を指し示した。


弥生はその麻美の行動が理解できず戸惑った。


「えっ?なに・・・?」


弥生は、意味も解らぬ麻美の姿を見つめながら考え込んでいたが、麻美の視線が自分に向いてない事に気がついた。


弥生は後ろに何かあると感じとり振り向くと、視線の先の少し離れた後方の道を自転車で二人乗りしながらこちらに向かって来る千恵と里美が見えた。


「ち、千恵ー!」


千恵たちの存在と、いま自分が反応した状況を知り、弥生は照れくさそうに苦笑いを麻美に向けた。


千恵は自転車をこぐ里美の後ろで立ち乗りをしながら携帯で弥生と会話をしていたのである。


千恵は、弥生が自分達の存在に気がついたのを知ると、携帯を持つ手を大きく振った。
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