恐怖 DUSTER
こちらに向かってくる千恵たちを見つめながら弥生はポツリと言った。


「もしかして、私からかわれたの・・・?」


麻美に視線を向けると・・・麻美は無言でうなづいた・・・


「おぉーい!弥生ちゃ~ん」


千恵たちは、携帯をとおさなくても聞こえるところまで来ていた。


「ねぇ、弥生もう携帯必要ないんじゃない?」


麻美に言われて、弥生は慌てて携帯の電源を切り麻美に返した。


甲高いブレーキ音と共に千恵が言った。

「到着!」


里美と千恵は自転車を止め弥生たちと合流した。


千恵は弥生の手を取り明るい声で言った。


「初めまして、千恵です!ヨロシクね」


「え、えっ?」


前の弥生の記憶を吸収して千恵の事は全て理解している今の弥生は、予想外の千恵の言葉に驚いた。


「千恵、弥生をからかわないの!入れ替わっても千恵と里美の事はすべて記憶しているんだから」


麻美が少し強めの口調で千恵に言う。


「ごめんね。解っているんだけど、ほら!私と里美は最初の弥生とは初対面だからさ、親しき仲にも礼儀ありよ」


「あのね・・・」


麻美は呆れた視線を千恵に向ける。


「あっ!こ、こちらこそヨロシク」


千恵の言う事はもっともだと感じた弥生が答える。


「弥生、反応しなくていいから・・・」


今度は弥生に呆れた視線を麻美は向けた。


「よかった!弥生、入れ替わってもその天然ボケ変わってないね!弥生の天然ボケは貴重だから」


「そ、そうかな?ありがとう」


「弥生・・・千恵、誉めてないから・・・」



冷めた口調で麻美が言い終わると、その場にいた全員が笑った。
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