恐怖 DUSTER
「違うよ!千恵が殺したんじゃない。あれは事故なんだから」

里美が声を上げて反論した。

「千恵が殺した!」

思わず、そう声にした弥生を里美は睨みつけた。

「違うの、あれは事故!」

「あっ!ごめん・・・」

弥生は里美の迫力に思わず謝った。

「麻美と弥生は覚えている?あの事故現場はトンネルを抜けてすぐのカーブで起きたでしょ。だからトンネルを抜けて後から来る車も次々と事故に巻き込まれていき大惨事になってしまった・・・その中に里美の家族の乗った車もあったのよ・・・」

「あの時ね・・・私は、妹が車の中で焼かれていたのを目の前で見てしまい錯乱状態になってしまい思わず燃え盛る車に向かって近づいて行ったの・・・」


「その時にね・・・事故を避けようとした里美の家族の車が走ってきたのよ」


「燃え盛る車の煙のせいで視界の悪い中、事故車を避けようと走っていた里美のお父さんが運転する車の目の前に、錯乱した私が飛び出してしまったのよ」


「千恵は悪くないよ、悪くないから」


千恵を気遣うように里美が言った。


「里美のお父さんは、ハンドルをきって飛び出した私を避けてくれたの」

「今でもはっきり覚えているわ・・・目の前を横切る車の後部座席にいた里美を」

「一瞬だけど目が合ったのよ。里美は覚えてないでしょうけどね・・・」


里美は無言のまま千恵を見つめていた。


「そして、私を避けた里美たちの車はそのまま防護壁に追突してしまい、そのせいで里見のお父さんとお母さんとお姉さんは亡くなってしまったのよ」


「私のせいで・・・私が里美の家族を殺したの・・・」


「違う、違うよ!千恵のせいじゃないよ」


里美は既に大粒の涙を流しながら泣いていた。


「違わないよ。あの時私が飛び出さなければ里美の家族は事故には合わなかったんだから。私が里美の家族を死なせてしまったの、殺してしまったのよ」


「も、もういいよ!もういいから千恵もやめて!」


弥生は千恵と里美の深い悲しみを知った。


「千恵、もういいわ。弥生にも十分千恵と里美の悲しみを理解できたから」
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