恐怖 DUSTER
麻美が冷静な口調で言った。


「千恵もあまり思いつめないほうがいいわ、逆にその思いが里美を苦しめる事にもなるんだから」


「解っているんだけどね。こう改めて話すと落ち込むのよ」


「だから言ったでしょ。私たちは悲しみ、苦しみ、そして憎しみを共有するんだって」


「麻美、その共有がよく解らないんだけど・・・?」



弥生は、自分が感じている疑問を麻美に問いかけた。


麻美は弥生の問いかけを予測していたのか千恵と里美に一瞬視線を向けて話しだした。


「私たちが体験した、悲しみや苦しみや憎しみを共有する事によって絆が生まれるの。その絆が思いの力になって、いずれまた来る入れ替わりに対応する事ができるのよ」


「次の入れ替わりに対応する?」


千恵が驚きながら問いかける。



・・・どうやら知らないのは自分だけでなく千恵と里美も初めて知ったんだ・・・



弥生がそう思っていると、麻美が弥生を見つめ言った。


「入れ替わりはね、普通ならその事実に気づいていないから対応の仕様が無いのだけど、知っている場合は心の思いが強いほうが勝つのよ」


「思いが強いほうが勝つ?」


驚く三人を見つめて麻美が魔性の微笑を浮かべながら言った。


「忘れたの?今の私たちは前の心に勝って存在してるんじゃない」


「私たちは、前の心の麻美。千恵。里美。弥生を、恐怖に落とし入れ心の思いを弱くして入れ替わったのよ」


そう言うと麻美は再び弥生を見つめて言った。


「でもね、弥生の心は弱いのよ」


・・・私の心が弱い・・・!

弥生の表情で、弥生が思っている事を察したのか麻美は優しい口調で言った。


「たしかに弥生も、あの事故で私の母の死を目撃してショックを受けたけど、その思いは、私たちとは違う別の感情なのよ」


「誰でも人の死は怖くて悲しくて辛いものだわ、でもね・・・その死が身内と他人では思いの深さが違うのよ」
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