恐怖 DUSTER
「里美、大丈夫。弥生は思ってないよ・・・」


優しくたしなめるように千恵が里美に言う。


麻美が里美の事を弥生に再び話し始める。


「弥生が言うように、里美はあの暗闇の場所で意識を失って閉じ込められていた・・・」


「だから、私が10歳のときに前の弥生に始めて会って感じた、あなたの存在のようなものは里美からは感じる事は全くできなかったのよ」


「私は、どうだったの?」


「千恵は弥生とは違い心そのものが、あの暗闇の場所に閉じ込められていたから、すぐに感じることができたわ」


「でもね、その時の千恵はただひたすら誤り続けていたのよ」


「ごめんなさい・・・ごめんなさいてね・・・」


その理由が、その場にいる全員が理解できた。


弥生は、いま自分に突然訪れた疑問を麻美に投げかけた。


「麻美は、千恵や里美と出会ったのはいつなの?・・・偶然に出会ったの?」


麻美は、再びあの魔性の表情を浮かべ微笑みながら話し続けた。


「前の千恵と出会ったのは、前の弥生と出会ってから一年後の11歳の時よ」

「前の私と出会ってからなの?」

「そうよ、だってその時の私はまだ、弥生に感じる気持ちも事故の事も何も理解していなかったから」

「麻美は、その時は何も解ってなかったの?」

驚きの声を弥生と千恵が同時に上げた。


麻美は、いたずらっぽく笑って言った。


「だから、私は転校してきてからすぐに前の弥生と仲良くなって友達になったわ」


弥生は、前の弥生が麻美と出会ってからの記憶を思い出していく。

「そして、一年後に学年が上がってクラス替えになった時に千恵と出会ったの」

「その間も、弥生に対する感じる思いがなんなのか知るために弥生の事を徹底的にしらべていったのよ」


「私の事を・・・」


自分の知らない所で麻美が自分を調べていた事実を知り複雑な気持ちになった。

弥生の暗い表情に気づいた麻美が弥生に言う。

「バカね。調べたのは前の弥生なんだから、あなたが落ち込まないでよ」


たしかにそうなのだが、やはり弥生の気持ちは複雑である・・・


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