線香花火の日



「……おい、いつまで寝ている?」



図太い声が、僕の頭の中を通り抜けた。



「起きろ!」



続いて、体がびくっとするほどの大声が、ぐさっと耳を貫いた。



「がはっ!?」



僕は辺りを見回した。



そこは懐かしい故郷ではなく、学校の教室。



クラスメイトたちのクスクスと笑う静かなざわめきと、外でセミたちが鳴き喚く騒音が今度はいきなり大きく聞こえはじめた。



「昼飯後の俺の授業は眠くなるか、ん?」



眉毛をひくひくさせ、この学校では有名な鬼教師、シドが僕を見ている。



「……あの、いえ、すいません」



僕は適当にその場しのぎの謝罪を述べると、まだ重たいまぶたをこすり、椅子に座りなおした。



「てめぇには後でゆっくり話をしなきゃならんようだな、シン」



シン……と、僕は名前で呼ばれた。



めんどうなことになったと、僕はシド先生に聞こえないよう舌打ちした。



名前で呼ばれる、それは地獄の説教部屋送りの合図として、生徒達には恐れられている行為だった。



シド先生は、普段生徒達を名前で呼ばない。



名前で呼ぶときは、ほめられるか怒られるか、そのどちらかと決まっている。



この場合、怒られると考えたほうがいいだろう。



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