線香花火の日
ふんっと鼻をならし、シド先生は黒板の方へ歩きだした。
はぁっとため息をつき、僕は机にもたれかかる。
「また居眠り?」
隣からそんな問いかけがあった。
見れば、フィナがほほ笑みながらこちらを眺めている。
「ここんとこ居眠りばかりね。シン、なにかあったの?」
シド先生の目線を気にしながら、フィナがそう続けて問う。
「なんにも?」
僕はとりあえずそう答えた。
彼女は高校に入って初めてできた友達だ。
入学してからもう半年になるが、今では一番仲のいい親友と言っていい。
「そぉ?ならいいんだけど……」
そう言うと、フィナは教科書に目線を戻した。
僕とは違って、彼女は勉強熱心だ。
そのわりに運動も得意で、いつも自慢の長いポニーテールをなびかせて、男どもの注目のまととなっている。
当然と言えば当然のことだろう。
「なに?私に何かついてる?」
フィナが僕の視線に気付いたのか、きょとんとした表情を見せた。
「な、なんでもない」
僕はあわてて正面を向く。
ノートを開いてようやく勉強の態勢になり、なんとかごまかそうと僕は努力した。
黒板では我が国の地図が大雑把に描かれ、近隣の国との過去の衝突記録が書かれていた。