ホスト前線上昇中
段々と時が進むにつれ珠希が言っていたことが、現実になっていく。
廊下を歩けば、あちこちで噂されるのが手に取るように分かる。それも慣れているつもりだったが、やはり気持ち的にいい感じは全くしない。
寧ろ陰でどんなことを言われているのがかなり気になって、聞き耳を静かに立てている自分が居る。

「……嘘、信じられない、部屋が偶然一緒になったからって調子に乗るなよ、アホ」

「なっなんですって~ぇぇぇっっ!!!」

怒りに任せて後ろを振り向けば、見た目は美由紀と同じくらい美形な青年が立っていた。

まさか……。

ふと頭に過ぎったのはこの彼も『ホストクラスの一員』ということ。
もうヤツらには関わりたくないと言うのにっっ!!

「流石に有名人は辛いね、陰でいろんなこと言われて。せっかくその一部を抜粋してあげたのになぁ」

「……そんなことしなくていいわよ!それより、あなたは誰?」

「一年G組、本城学。よろしく」

私の恐れていたことが……始まろうとしているのかもしれない。

「よろしくって……一体どういう……?」

「早速だけど君に話があるんだ、美由紀のことでね」

相手がかっこいいからかな。
なんかデートに誘われたみたいにドキドキするよ。

「……話ですか……?」

「今日の放課後、校門のとこで待ってるから、じゃ!」

「あっ、あの……」

行っちゃった。
強引なとこは美由紀に似てる……かも。


私のバカバカっ!こんな時になんであいつのことなんか思い出すのよ!
よりによってあいつのことなんか――。


一人ぽつんと残された廊下の真ん中で、遠くから鳴り響くチャイムの音を聞いていた。
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