ホスト前線上昇中
本気の度合い
 『頭が真っ白になる』ってのは、きっと今の私の状態のことを言うんだろう。
ぽっかりと穴が空いたような、そんな感じ。
とてもじゃないけど考えることなんてできなくて、
……発する言葉すらも見当たらなくなっていた。

「驚いた?」

「そっ……そりゃあ」

彼はさりげなく私に声をかけた。

「その後、いろいろと大変だったんだぜ。親まで巻き込んでの大騒動。結局、美由紀は無関係だったんだけどな」

「関係なかった……?」

「椎名が作り上げた既成事実に振り回されたってわけ。もちろん、妊娠も嘘」

「それだけ美由紀のことが好きだったのね」

麻理さんが嘘までついて手に入れたかったモノ。
それは──。

「……ということになるんだろうな」

彼はカフェオレを飲み干すと、椅子の背もたれに寄りかかった。

「あいつは何故、恋愛は『ゲーム』だって決め付けるんだろう」

「教えてほしい?」

私はコクンと頷いた。

「それが美由紀にとってのプライドだからさ」

そこまでして守らなければならないプライドなんて──。

いっそうのこと、

捨ててしまえばいいのに。

いや、

捨てることができたら楽なんだろうなぁ……。
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