ホスト前線上昇中
「例えば……?」

『例えば』──ってそりゃあ、

「えっ……?ちょ、ちょっと」


kiss……。


拒むことすら許されず、不覚にも私はヤツと口唇を重ねていた。


――パシッ。


無理矢理キスされた私は我に返ると、思いっきり左頬をひっぱたいてやった。

「なっ何するんだよ」

「それはこっちのセリフ!!あんたなんか最低!大っ嫌いよ!!」
初対面でいきなりキスするか普通。

「もしかして、初めて?」
ムキになっている仕草を見て悟られたらしい。
私には彼の自信満々に見える表情がむかついて仕方なかった。

「……それは」

だからなんだって言うのよ!こんなヤツにファーストキスを奪われて私って一体……。
ああ~!自分が自分で情けなくなってきた。

「もしかして図星だったりして」

「うるさい!こっちはね、キスをすることに対して、何の抵抗感もないあんたとは違うの!!」

大抵こういう男は軽いヤツに決まっている。
女の子なら誰にでもキスしているタイプなんだわ!きっと、そうに違いない。
もう絶対に近くには寄らせたりしないんだから!!次は何されるか分かったもんじゃないわよ。

「随分な言われようだな」

「当たり前でしょ」

「まぁいいや。これからよろしく!渉。俺のことは美由紀でいいから」

よっ呼び捨て……。もはやこんなことくらいじゃ驚かなくなってもいるが。


「よ……よろしく」


彼の笑顔に負けて思わず挨拶してしまう。
込み上げる怒りを抑え、心の中で何度も今日限りの辛抱だ……と自分に言い聞かせながら。
そうでもなきゃこの空間は耐えられない。

明日になればアイツともおさらばできる、それだけが今は唯一の支えだった。
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