トリプレ
 放課後の講習も黙々と受けた。隣の紘貴も真剣だ。こいつは私との噂を知ってるんだろうか?何喰わぬ顔で接してくるけど…気付いてない?

 講習が終わって帰る頃は日が暮れていた。
「早く帰らないと怒られるんじゃない?お父さんに。」
 もう、お父さんの話はやめて…。
 下駄箱から靴を取り出した時、コロンと小さな音が鳴った。
「ん?」
 靴を振ってみる。中から画鋲が2個落ちてきた。
「…。」
「…。」
 紘貴と顔を見合わせてしまった。
「かっ…カッコイイ画鋲だね~。この色といい艶といい…」
 何言ってんだ、紘貴よ。
「典型的な嫌がらせだな。」
 私の方が冷静だ。
「誰がそんな事を?」
「知るか。」
 私は靴の中を確認してから履いた。そのまま玄関を出る。
 紘貴も念のため靴の中を覗いてから履いていた。
「あんな事されて、許せるの?」
「許すも何も、誰がやったかわかんないし。」
「犯人見つけようよ。」
「何で?」
「だってヒドイじゃん。瑞穂が何をしたっていうんだ?」
「見つけてどうすんの?」
「謝ってもらう。」
 おめでたい奴。そんなんで解決すりゃ警察はいらないの。
「いーよ。めんどくさい。」
「瑞穂の事でしょ!もっとエスカレートしたらどうすんの?」
「犯人見つけてさ、謝ってもらったとしてもさ…多分、殴っちゃう。」
 私だってムカついてる。言いたい事あるなら直接言えばいい。それを陰でコソコソ嫌がらせして…そんなんで何が得られるんだ?
 謝られてもこの怒りは治まんない。仕返しをしてもいいなら犯人を見つけたいと思うけど、結局謝られて、もうしませんじゃ納得いくわけない。
「でも俺はこのままは嫌だ。」
< 103 / 203 >

この作品をシェア

pagetop