トリプレ
 紘貴は放課後の講習が始まる前に玄関を見張ると言い出した。そこに何故か泉もいた。
「俺が先に見つけてやる。」
 とか意気込んでいる。
 そこで泉と紘貴は意気投合し、何気に親しくなっていた。
 しかしその日は誰も現れなかった。
「なんだよ!こねーのかよ。」
 泉は悔しそうにしている。捕まえたらどうしようか綿密に考えていたからだ。
「いつまでも下駄箱にこだわるとは思えないんだけどね。」
 これは私の意見。
「じゃあどうやって捕まえよう?」
 紘貴は真剣に考えている。数学の問題を解いている時と同じ顔だ。
「こんな陰湿なのは女のする事だ。それにお前らの交際を妬む…」
「わーっ!!」
 泉の余計な言葉を大声を出して阻止した。紘貴はその噂を知らないんだよ!
「え?コウサイ?」
 ヤバイ。紘貴が感づく…。
「隠す事じゃねーだろ?犯人を特定する重要な手掛かりなんだから。」
 泉はどこぞの探偵みたいな台詞を吐く。
「もしかして、俺と瑞穂付き合ってる事になってるの?」
 バレた…。なんか気まずくない?この噂。
「それを妬んだ女の仕業だ。」
「何で妬むの?付き合ってないのに。」
「だから、そーゆー噂が流れてんの。それを信じた相良信者が瑞穂を妬むわけ。何であのブスが相良君と付き合ってんのよ!ってね。」
 ブスって…何気に言ってくれるね。同じ顔の女を好きなくせに。
「…相良信者って。それで瑞穂を妬むのは筋違いだよ。」
 泉と紘貴のやり取りを聞いていたら、くだらないと感じてきた。
 好きな人に好きとも言わないで、その彼女に八つ当たりなんてバカげている。だって…もし付き合っていたらの話だけど…彼は彼女の事が好きだから付き合っているんじゃないの?彼女の方を一方的に妬んで嫌がらせしたって、彼の気持ちはそっちに向くだろうか?
 この行為は全く意味がない。
< 107 / 203 >

この作品をシェア

pagetop