トリプレ

　その日の放課後、泉と玄関を巡回した。私はもうめんどくさくてイヤだったけど、泉の張り切りようが凄くてそんな事は言えなかった。
　教室に戻ってきたら恵那がいた。
　私の机の中をあさっていたのだ。
「テメーかっ！」
　泉は恵那の胸倉を掴んだ。女にも容赦ない奴だ。
「待って。違う。私じゃない！」
「はぁ？この状況でよくもしらばっくれるなぁ？」
　ヤクザか、お前は。
「泉…もういいよ。」
　私は裏切られたショックよりも呆れていた。人を信じ込ませといて、こんな風に裏切るなんて役者だよ。
「瑞穂、違うの。机の中にゴミが入ってたから取ろうと思って。」
「はぁぁ？誰が信じるか。」
「泉っ！いーから放せよ。」
　渋々手を放す泉。
「私は紘貴と付き合ってない。そう言ったよな？逆恨みしても意味ないんだよ。」
「わかってる。私もそう言ったよ。でも…」
「え？誰に言ったの？」
　恵那の他にも犯人がいる？
「…私じゃないの。本当に。」
「誰に言ったって聞いてんだよ！」
　泉、声デカイ。うるさい。
「…私、チクったって言われる。」
「お前の友達なら、名前は聞かない。」
「何言ってんの？そーゆー問題か。」
　うるさいなぁ～。
　チクった恵那にまた嫌がらせされたら、結局同じ事の繰り返し。被害者が変わっただけで、何も解決はしない。そんな事もわからんのか？
「問題はそこじゃねー。人に嫌がらせを平気でする奴をお前は友達だと思ってんのか？お前は誰をかばってんだ？自分だろ？やってはいけない事だとわかってるけど、チクったら自分が標的になる。みんなに好かれるように解決するには、こっそり嫌がらせの後始末をする事だ、とでも考えたんだろ。それってどうなの？何が変わる？」
　泉の言った事は一理ある。でも恵那の気持ちもわかる。責めるのは恵那ではないハズだ。
「ごめんね。瑞穂。知っていたのに止められなかった…。チクる勇気もなかった。ごめんね。」
「恵那が謝る事じゃない。ありがとう。」