トリプレ
「さてと、犯人もわかったし、どーすっかなぁ~。とりあえず相良に報告だな。」
 泉は再び学校に戻っていった。私も講習がある。正直、犯人どころじゃない。
「もういいよ。誰かわかったらスッキリした。」
「俺はスッキリしない。」
 教室に戻ったら紘貴がいた。もうすぐ講習が始まる。
「お~相良。犯人わかったぞ。このクラスの女子2名。」
「えっ!いつの間に。」
「俺の推理力よ。君とはここが違うんだよ。」
 そう言いながら泉は自分の頭を指さした。
 確かに紘貴とは違うね。明らかに泉が負けている。
「そっか…。ちゃんと話をした方がいいね。」
「一回痛い目合わせりゃいーんだよ。」
 この男は…。どこまで血の気が多いんだ。幼なじみながら恥ずかしい。
 そこに2人の女の子が入ってきた。さっき恵那に聞いた犯人だ。
「あ…。」
「まさか?」
 私の反応を見て、泉が動いた。
「犯人は現場に戻る!サスペンスの基本だな。」
 とか言いながら、2人を捕まえた。2人はもがいていたけど、泉の方が圧倒的に強い。
「お前らが瑞穂に嫌がらせしたのはわかってんだぞ。大人しく白状しやがれ!」
 それはサスペンスじゃなくて時代劇だよ…。
「瑞穂は大事な友達なんだ。これ以上、イヤな事はしないでほしい。せっかくのクラスメートだから、仲良くしよう。」
 紘貴の言葉はまるで仏サマのようだ。
 大事な友達、と初めて言われたのがこの男か…。どうしよう。嬉しいかも。大事なんて、なかなか言ってくれる人はいない。
「月館君、放していいよ。」
「え?殴ったりしないの?」
「そんな事はしないよ。瑞穂に謝って。」
「…ごめんなさい。」
 2人は謝ってくれた。私の方は全く見なかったけど、それでもいい。多分、もうしないだろう。彼女達が好きな紘貴に言われたら出来ないハズ。

 講習が終わっていつものように紘貴と帰る。
 紘貴は、何事も無かったかのようにくだらない話をしては笑っていた。
 こいつは私の事をどう思っているんだろう?変な噂がたっても変わらない態度。大事な友達。
 少しだけ、こいつが好きだと言う女の気持ちがわかる気がする。
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