トリプレ
相良君と瑞穂の教室には、もう誰もいなかった。机も元通りに並んでいた。
「お兄ちゃんの席はどこ?」
相良君は窓側から2列目の一番後ろの席を指さした。由衣ちゃんは相良君の席に座った。
「一番後ろなんだね。みんなの背中が見えるね。」
由衣ちゃんの一言一言が胸に刺さる。
「その隣が私の席だよ。」
瑞穂も自分の席に座った。
「わぁ、いいなぁ。ねぇみんなも座って。」
由衣ちゃんに言われて、私が瑞穂の前の席に、琉璃が由衣ちゃんの前の席に座った。相良君は立ったまま、由衣ちゃんのそばから離れなかった。
「学校って感じ。ここでお兄ちゃんは勉強したり、友達と遊んだりしてるんだね。」
はしゃぐ由衣ちゃんの隣で相良君は泣きそうな顔をしていた。
私の知らない相良君の表情。今まで、どんな風に生きてきたのだろう。何を感じて、何を堪えて、何を得てきたのだろう。家族が健康な私にはわからない苦労があるのだろう。由衣ちゃんも辛いけど、支える家族だって辛いんだ。
相良君は顔を伏せて教室から出て行った。
泣いていた。
「お兄ちゃんの席はどこ?」
相良君は窓側から2列目の一番後ろの席を指さした。由衣ちゃんは相良君の席に座った。
「一番後ろなんだね。みんなの背中が見えるね。」
由衣ちゃんの一言一言が胸に刺さる。
「その隣が私の席だよ。」
瑞穂も自分の席に座った。
「わぁ、いいなぁ。ねぇみんなも座って。」
由衣ちゃんに言われて、私が瑞穂の前の席に、琉璃が由衣ちゃんの前の席に座った。相良君は立ったまま、由衣ちゃんのそばから離れなかった。
「学校って感じ。ここでお兄ちゃんは勉強したり、友達と遊んだりしてるんだね。」
はしゃぐ由衣ちゃんの隣で相良君は泣きそうな顔をしていた。
私の知らない相良君の表情。今まで、どんな風に生きてきたのだろう。何を感じて、何を堪えて、何を得てきたのだろう。家族が健康な私にはわからない苦労があるのだろう。由衣ちゃんも辛いけど、支える家族だって辛いんだ。
相良君は顔を伏せて教室から出て行った。
泣いていた。