トリプレ
 紘貴の妹は足が細くて、肌が白くて、小柄な子だった。
 一瞬、言葉がつまった。触れたら壊れてしまいそうなくらい、弱弱しく見えたからだ。
「はじめまして。相良由衣です。」
 由衣ちゃんの声は細かった。呼吸をするとヒューヒューとどこからか空気が漏れているような音がした。話すのも辛いのかもしれない。
「龍神瑞穂です。今日は学校案内してあげるからね。」
「うん。」
 由衣ちゃんの笑顔は紘貴にそっくりだった。
 由衣ちゃんは紘貴と手をつないで歩いていた。というよりは、紘貴に支えてもらいながら歩いているようだった。
 ずっと、病気と闘ってきたんだろう。由衣ちゃんも、紘貴も。
「トイレ行きたいな。」
 由衣ちゃんがそう言うから、私が付き添おうとした。けど、
「大丈夫。病院ではいつも一人だよ。」
って言った。
「由衣ちゃん、話すの辛そうだね。大丈夫かな?」
「うん…肺が片方つぶれているとか穴が開いているとか、そんな感じらしい。俺もよくわかんないんだ。そういうのは大人は教えてくれない。たった一人の妹なのに。」
 そうか。紘貴も由衣ちゃんの病気の事はよくわからないのか。
 由衣ちゃんがトイレから出てきて、私達はまた歩き出した。
 理科室では科学部の実験を見て、美術室で美術部の絵を見て、他のクラスで焼き鳥食べて、輪投げをしてぬいぐるみを当てて…由衣ちゃんの体の負担にならないように気をつけながら回った。由衣ちゃんは楽しんでくれているようだ。
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