トリプレ
「お姉さん達にお願いがあります。」
 突然の申し出。由衣ちゃんは私達3人の顔をまっすぐに見つめた。その表情はとても柔らかい。
「由衣が死んだら、お兄ちゃんを助けてあげて下さい。もう由衣には時間がないから。」
 その柔らかい表情とは裏腹に、由衣ちゃんの言葉は私にはきつかった。
 もう時間がない?由衣ちゃんはやっぱり体の具合が悪いの?
 そしたら紘貴は、残された紘貴は、どんなに辛いだろう。大事に想っている妹を亡くすのは悲しいなんてもんじゃないよね。
 そんな紘貴を私が助けられるだろうか。紘貴の深い傷をどこまで理解しているのかもわからないのに、私なんかで助けられるのかな?
 紘貴には由衣ちゃんが必要だよ。紘貴にとってはたった一人の家族だ。その絆以上に強いものはあるかな?自信がないよ。
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