トリプレ
 それからの記憶が曖昧だった。
 気が付けば家にいて、テレビにはいつも観ているお笑い番組が映っていた。家族が居間でそれを観ている。
 体がフワフワしているようだ。
 夢をずっと見ていたような…。
 私の右手には包帯が巻いてあった。瑞穂の左目には眼帯がしてあった。
 夢ではなかった。
 相良君は死のうとして、ハサミで手首を切ったのだ。
 相良君はどうなったんだろう?
 明日香も瑞穂も何も言わない。
「相良君は…?」
 みんなが一斉に私を見た。何か変な事言った?
「ようやく、落ち着いたかい?」
 お母さんは私を抱きしめてくれた。
「大丈夫。心配ないよ。」
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