トリプレ
「待って、紘貴。」
「ん?」
「最後に一緒に帰ろう?」
「…うん。」

 紘貴とこの道を歩くのはこれで最後。こんな日が来ると知っていたのに好きになってしまった。それは自分では止められない感情。
「東京行っても、元気でやれよ。」
「うん。瑞穂もね。あ…まだ言ってなかった。合格おめでとう。一生懸命勉強した甲斐があったね。」
 紘貴とずっと頑張ってきた。本当は二人で行きたかった。だから頑張ってこれたんだ。
 ごちゃごちゃ考えてたら泣けてきた。
 紘貴の前で泣くつもりなかったんだけど、どうしても止まらなかった。
「…泣くのはナシだよ。」
「勝手に出てくるんだもん。仕方ないじゃん。…紘貴は彗星のごとく現れてさ…」
「彗星…?」
「ごちゃごちゃ人の心を乱して去って行っちゃってさ…」
 自分でも何を言ってるのかわからない。
「ずるい奴だ。」
 これが言いたかったわけじゃないんだけど…どうしよう。素直にならないと。
「瑞穂だってなかなかずる賢い。」
「そーゆー意味のずるいじゃないし、私はずる賢くない。」
 ひどい言われよう…。
「ごめん。紘貴。本当に言いたいのは…紘貴が好きだって事。もう会えないかと思うと悲しくて…。」
 ついに伝えた。好きだって言えた。
「好きってどういう事?」
 わかんないのかよ!
「好きは好きだろ!何度も言わせんな、バカ。」
「ちょっと予想外で…ビックリした。」
 あ…フラれる予感。心拍数が上がる。
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