トリプレ
「瑞穂の目のキズを見る度に、心が痛む。正直、あんまり瑞穂を見れなかったんだ。初めて会った時も、クラスから浮いてる瑞穂を見て、過去の自分を見てるようで怖かった。でも実は瑞穂は強くて俺とは全く違ってた。それを知ってから、もう好きだった。俺の方が多分、先。」
「え?何が?」
「ちょっと、話聞いてた?」
「え?いや…もう混乱してて理解出来ない。」
「だから~、俺の方が先に瑞穂を好きだったよって事。」
「へ?好きって…どーゆー事?」
「好きは好きでしょ。何度も言わせんな、バカ。」
 それは私が言った台詞。
 紘貴も私を好きでいてくれたんだ…すげー嬉しい。
「本当は言わないつもりだったのに…瑞穂が言うから。」
「何で?」
「だって…東京に行きたくなくなるじゃん。俺だって寂しいよ。」
「大丈夫だよ!電話だってあるし、携帯は持ってないからメールは無理だけど手紙書けばいいし。」
「手紙か…いいね。原始的で。」
「だから紘貴は東京で頑張らなきゃ。」
 行ってほしくないと思ってるのに…紘貴が行きたくないなんて言うから、励ましてしまったじゃないか。
 だってこれは変わらない現実。せめて私が紘貴の背中を押さなきゃ。
「俺、病院の中にある小さな教室で教師をやりたいんだ。」
「それ、いいね!紘貴ならなれるよ。」
「うん。高校卒業したらこっちの大学に進学してこっちで働きたいと思ってた。」
「うん。」
「3年、待ってくれる?」
「うん。」
「良かった…。3年後にまた会おう。」
 紘貴と笑顔で別れた。3年後に会う約束をして。
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