トリプレ

長女 明日香の恐怖

　ある日突然、泉は学校に来た。
　教室の空気が凍った。
　泉に久しぶりに会った。というか、見た。
　泉はズカズカと偉そうに歩き、薄っぺらいカバンを机の上に投げつけるように置いた。そして、またまた偉そうに座った。そこはスズカの席だ。
「どっどうしよう…築館君、席替えした事知らないんだね。どうしよう、どうしよう。」
　スズカは私にしがみつく。
「明日香の幼なじみなんでしょ。なんとかしてよ～」
　そんな事言われても…不良となった幼なじみとは、しばらく話していない。
　私だって怖いよ…。
「お願い！明日香っ！」
「…わっわかったよ。」
　断りきれない。
　さぁ勇気を出すのよ、私！
「おっおはよう…」
　声が裏返った。
　泉は冷ややかな視線で私を見た。怖いっ！
「あの…この前席替えして…泉の席替わったんだよね。廊下側の一番後ろ…。」
　みんな泉が怖いから、勝手に端っこに決めたのだ。
　泉は無言で立ち上がり、移動した。
　あぁ助かった。…と思ったのも束の間。
「明日香、今日の教科書全部借りてきて。」
　泉に命令された。どうせ授業なんてロクに聞きもしないくせに…。
　でも怖くて反論出来ません。