トリプレ
 立ち上がったら、目の前で泉がアキラを殴っていた。
 え…?何で?泉と…明日香もいる。
「何すんだよテメー!!」
 アキラはよろけながらもキレていた。グーは痛いよね。
「琉璃を殴ったから殴り返してやった。」
 私のために…。
「やっぱり、こいつと付き合ってたんじゃないか!」
 あぁもう!
「お前が琉璃を殴ったから殴り返したって言ってんだろ。意味わかんないんだけど。」
 そうだそうだ!意味わかんないぞ!
 なんなの、もう!めんどくさい。コイツ、めんどくさい!
「だから~泉は幼なじみだって言ってんじゃん。ちょっと話しただけで付き合ってるとか言われてさ。マジ、キモいんだけど。もういい!別れる。」
 言っちゃった…。言ってやった…。
「はぁ?何言ってんの?何で…」
「ビンタはる男なんかと付き合ってらんない。」
 よし!決まった!
「メールも電話もしてこないでね。帰ろっ。」
「おいっ琉璃…!」
 アキラの情けない声は無視した。もう聞きたくない。

「泉のおかげで彼氏と別れましたけど。」
 嫌味に聞こえたかな?嬉しいような、悲しいような…微妙な気持ち。
「モテる男はツライね。」
 はぁ~…溜息出ちゃうよ。空気読んで、頼むから。
「でも殴ってくれて助かったかも。」
 うん、きっとそう。だけど、アキラの事を好きだったのも本当。休み時間がくるのも楽しみだったし、家で遊んでる時だって楽しかった。
 嫌いになるなんて、考えられないよ。すぐには嫌いになれないよ…。
「だべ?俺は女を殴る男は大嫌いでよ。あんな奴別れて正解だよ。…あ。」
 バカ~!何でこっち見んの?
 泉と明日香に泣き顔を見られてしまった。
 こんなハズじゃなかったのに…。別れるつもりじゃなかったのに…。
 どうしても涙が止まらない。
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