トリプレ
「えっ紘貴?」
 エレベーターから紘貴が出てきた。まさかこんな所で会うとは思わなかったからビックリした。
「瑞穂?何でこんなとこに…あっ…こんにちは。」
 紘貴はやっぱり両親に頭を下げた。この前の父の無礼、ホントに気にしてないの?
「この前の…」
 お父さんも紘貴を覚えていた。あんだけ騒げば当然だろうけど。
「誰か入院してるのか?」
 お父さんの口調はちょっと厳しい。
「えっと…」
 なかなか答えない。うちのお父さん怖いよね。
 でも日曜日に病院にいるって事は、ほとんどお見舞いでしょ。紘貴の家族だとしたら…
「もしかして妹?」
 なんとなく、そんな気がしただけ。
『相良君、妹いるの?』
 明日香と琉璃が同じ反応。
「…うん。妹いるよ。入院してる。」
「長いの?入院。」
 お母さんが聞いた。
「そうですね。ずっと…」
 あ…。修学旅行で妹にお土産を買っていた紘貴はどことなく元気がなかった。あの時も入院していたんだ。確か中1だったハズだけど、転校してきた話は聞いていない。もしかしたら学校にも通えないのだろうか…。
「1人でお見舞いに来たの?」
 琉璃が聞いた。私もなんとなく疑問に思っていた。
「うん…みんなは忙しいみたいで。」
 みんな?。
「相良君の家族って…」
「まぁ今度遊びに来い。」
 琉璃が何かを言いかけたけど、お父さんに見事に邪魔された。しかも、
「この前と言ってる事違うじゃん。」
「2人で出掛けるくらいなら親の監視下で遊んだ方がマシだからな。」
 はぁ?
「元気でやれよ。」
 元気でやれよ…じゃねーだろ!上目線かよ。
 お父さんの態度がこの前と違う。何で?何かあったんだろうか…。
 紘貴って不思議だな。あいつの事、わかりそうでわからない。
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