ギブス
その、裕隆の声は、裕隆の部屋にいた美咲の耳にも届いていた…

何事か…と、裕隆の部屋のドアを開け、足を踏み入れた廊下から柚葉の部屋の方に、その瞳を向けた美咲…

その、美咲の瞳に…柚葉の身体を抱き締めている裕隆の姿が映った…


その耳に…


「…柚葉…、何があったのか…話してくれよ…
お前が…泣くのを我慢しているのも…、泣いているのを見ているのなんて…辛いんだ…」


その、裕隆の言葉に…

裕隆の、その言葉に…、次第に…こらえていた涙が溢れ出した柚葉…


『…お兄ちゃん…っ』


柚葉は、その、手を裕隆の背に回し…


『…振られちゃった…』


静かに…、消え失せそぅな声で言った柚葉…
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