ギブス
『……っ』
【…先生…っ


電話…、掛けて来てくれた…】


柚葉は、その…液晶画面に表示されてあった名前を見つめたまま…

ボタンを押そう…とした…


『………』


その、次の瞬間に…

急に、その携帯の液晶画面が…ぷっつりと真っ黒になった…


柚葉が、携帯の電源をオフにしたからだった…


真っ黒になった…携帯の液晶画面を閉じ、再び…ベッドの上に倒れ込むよぅに、横になった柚葉…

涙の粒が…、次から次へと溢れ出し…枕を濡らした…


『………』


手に持っていた携帯の電源を入れた…


その、着信履歴の1番上に表示されてある名前…

その、名前に…溢れ出した涙が止められなかった…


『…先生…っ、…先生…』


携帯を握りしめ…泣いた…


耳元に…、諒が自分の名を呼ぶ声が甦っているよぅな錯覚に陥った…


“…柚葉…”


『………』
【…そんな…

…声で…、呼ばないで…

そんなに…、優しい声で…

あたしの、名前を呼ばないで…



その、声に縛られたまま…

身動きなんて…、

出来なくなってしまぅ…っ】
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