ギブス
諒は、夏が近づきつつある空を見上げ、深いため息をついた…


その、瞬間…喉の奥に感じた…渇き…


「……っ」


今までとは…違う…

確実に…、何かが…


諒は、瞬時に喉元に触れた…

口元から、微かな息遣いが漏れる…


「…血が…っ」
〔…欲しい…


今までは…、あの子がいたから…

自制出来ていたのに…っ〕



ソレまで…、柚葉が側に居、保っていた本能が…

目を醒まそう…と、していた…



諒は、屋上のフェンスにもたれ掛かり…ネクタイを緩める…


「…柚…っ」
〔…今すぐ…

あの娘の…血を…っ〕


…が、その瞬間に…

自分の中の…、もぅ1人の人物の声が聞こえたよぅな気がした…


「……っ」
〔…ダメだ…


いま、柚葉の血を吸ったら…


あの子が…

…死んでしまぅ…っ



ソレだけは…っ〕



…と、その時…


「先生…、櫻井先生…」


自分の名を呼ぶ…少女の声に、我に返った諒…
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