ギブス
その、紗理奈の行動に…、思わず首を傾げた柚葉…

明らかに…、今までの授業前とは違う…


「…っへ…っ?“世界史”っ」


そぅ、言った…柚葉の言葉に、吹き出した紗理奈…

柚葉の耳元に…


「今年の新規採用の臨時講師の世界史の先生っ
すっごぃっカッコいいのっ」


…と、語尾にマークを散りばめながら言った紗理奈…


その、紗理奈は…持っていた鏡を柚葉に見せた…

鏡の中に、柚葉の顔が映る…


「…ちょっとマスカラ、落ちてるょ…
今度、ウォータープルーフの…貸そうかっ」


…と、言った…紗理奈の言葉…

その、鏡に映った自分…

微かに…、右目のマスカラが取れかかっていた…

泣き出しそぅ…だった…




その瞬間…、教室中に、チャイムが鳴り響いた…

そして、開いた…教室のドア…

未だに…、昼休み気分が抜けきれない生徒たちは、慌てて…自分たちの席に戻って行く…


柚葉は、茫然…と、その場に立ち尽くしたまま…教室のドアを閉め、壇上に上がった青年に…視線を泳がせた…

その、グレーのスーツに、ノーネクタイに…、ノーフレームの眼鏡を掛け、無造作な茶色の髪の…


「授業を…始めたいんだが…、
席に着いてくれなぃか…っ?」


そぅ…、言った…青年…

その、言葉に…柚葉は、我に返った…


『あ、すぃません…』
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