ギブス
ダイニング・ルームのドアを開け…、部屋を出て行こうとした柚葉は、裕隆の方を振り返り…


『アトで〜… 先にお風呂、入ってからにする…っ』


…と、裕隆に笑顔を向け…部屋を出て行った…




『……っ』


その、部屋のドアを閉めた…

そのドアに…、背中を押し付けながら…口元を押さえる…

声が…、出ないよぅに…

泣き出しそぅな声が…、漏れないよぅに…

声を…、殺した…


『……っ』


諒は、いつも…柚葉が諒の住むマンションに遊びに行く時は、必ず…と、言っていい位に、柚葉の好きなフルーツの乗ったケーキを用意してくれていた…

普段、“甘いモノは、食べない”と、言っていた諒が…何故、自分の為に用意していたのか…解らなかった…

‐特別な存在だった‐…と、言うコトに…



そして…

脳裏に…、幾つも…幾つも…

甦る記憶…

優しく…笑いかける表情と…

低めがちな…心地よい声…


側にいた時間の…1つ1つが…、記憶の欠片となって…刻まれていく…



忘れられない…記憶となっていく…


『………』
【…先生…

…好きだよ…、…大好きなの…

命なんか…、失くなっても…いぃくらぃ…

…大好きなのに…っ】
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