ギブス
「柚葉は…、元気なのか…」


その、寂し気に言った裕隆の言葉…


「……っ」


「…当たり前か…、ずっと…好きだった男の側にいれるんだもんな…」


そぅ言った…裕隆の言葉に、聞き返した奏…


「…柚葉が…、まだ小さな頃、あの先生に1度会ってるみたぃなんだ…
アイツ、その日…殺人現場に偶然、居合わせてて…
その殺人者と…あの人がごっちゃになってるみたぃだけど…」


「…え…っ」


「…知らない…っ
隣の市で起きた…未解決事件…
10代の女子高生の体内から…、血液が一滴も無くなった…殺人事件…
…ま、二宮も…6年前なら…、まだ小学生だもんな…っ」


「………」


その、裕隆の言葉に…、奏は微かに反応を示した…



その…6年前は…

兄である諒が…、存在をリセットした年でもある…



「…あ、兄貴と…柚葉ちゃんって…6年前に会ってるの…っ」


その、奏の動揺ぶりに…、首を傾げた裕隆…


「…あぁ…、柚葉はそぅ言ってるけど…
…他人の空似だろぅな…、人を1人…殺した人間が…のうのうと生き長らえて、教職に着けるはずがなぃのだろうし…っ
その時期に偶然、会っていたのかもしれない…あの人を…
‐あの時の殺人者だ‐…と、思い込んでいたのかも…っ」


「……っ」


良くない…予感が、脳裏を掠めた…



兄である…諒が、柚葉に血の契約である蝶のアザをつけたのは…諒が高校生の柚葉を見つけたからだ…と、思っていた…


…が、違うのかもしれない…
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