ギブス
「…奏か…、どうした…っ」


微か…に、ため息混じりに呟いた…その名に…

柚葉も、携帯を持つ諒の方を見上げる…


“…テレビ…、兄貴のマンション近くの公園が映ってるけど…っ”


そぅ、耳元に届いた奏の声…


先程、マンションの部屋に訪れた2人の刑事が言っていた殺人事件か…と、思った…


「……っ」


諒は、ダイニング・テーブルの上に、置いたままになっていたテレビのリモコンの電源を入れた…

その、テレビ画面に映し出されているニュース…


《…本日、12時過ぎに女性の変死体が発見されました…
女性の体内から、血液が残されていないコトから…変質者的犯行と見て…捜査されている模様です…》


その、女性リポーターの言葉に…

諒の心臓が一瞬、跳ね上がった…


『…先生…っ』


諒の、その…色素を失い欠けた表情を…覗き込んだ柚葉…
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