ギブス
その…、耳元に届いた声が…

自分だけのモノであるかのよぅな…錯覚に陥る…


自分が…特別であるかのよぅな…錯覚を…



《…柚葉…、返して欲しかったら…
明日…、また…俺の元におぃで…》


『……っ』


その、柔らかな…優し気な声に…

胸が高鳴った…



先程まで…、恐怖心で震えていた心が…

確実に…、急速に…、色を換える…



『…先生は…、ホントに…
あの日に逢った人ですか…っ?』
【…朧気(おぼろげ)に…記憶の中にあった人には…

怖いなんて気持ち…、

少しもなかった…


ただ…、月明かりの下で、綺麗な…


そんな感じしかしなくて…っ】


その、柚葉の言葉に…、

電話の奥の諒が…クス…と、笑った…


《…なら、柚葉が…確かめて…
お前が言う…‐綺麗な人間‐…か、…‐人殺し‐…か…
お前が…確かめるんだ…》


『………』
【どぅして…

ただ…、声を聞いているだけで…


こんなに…、胸が苦しいんだろぅ…

切ないんだろぅ…

涙が…、溢れ出しそぅになるんだろぅ…っ



あたし…、

先生のコトが…、好き…



あの日…、初めて…逢った瞬間から…

…ずっと…、好きだった…】
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