ギブス
諒に似た…面差しをした…

…が、同じ兄弟とは思えない程…、その雰囲気は真逆に近かった…


だから、尚更…諒に似ているから、余計…まるで、違う人物だ…

諒は、もぅ…いないのだ…と、思い知らされる…


もぅ、2度と…逢うコトも叶わない…と、思い知らされる…



その、唇から…漏れたため息…

生暖かい…涙が、頬を伝い落ちた…


『……っ』
【…忘れちゃうよ…


触れた指先も…、温もりも…、優しく笑い掛けてくれていた表情も…、声も…、


全部…、大切な…宝物だったのに…

側にいてくれなきゃ…

少しずつ…、失くなってくよ…っ】


その瞬間…に、思い出した香り…

諒と奏の母親である響子を探していた…駅で…
擦れ違う人々にまぎれ…嗅いだ香り…

諒が愛用していた香水…、一瞬…、抱き締められたかのよぅな…
錯覚がした…



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