ギブス
そして…、職員専用の駐車場まで歩いて行き…

持っていた車のキーのボタンを押し、施錠を解除させた…


そして…その、後部座席のドアを開けた…その瞳に…


『……っ』


両手・両足に、戒めで縛られ…
口にも…、柚葉のネクタイのリボンで猿ぐつわにされている…


「…柚葉…っ」


今にも…、泣き出しそぅに…涙をいっぱいに溜めた瞳で諒を見つめる柚葉…


諒は、掛けていた眼鏡を外し、その眼鏡をスーツのポケットにしまい入れた…


怯えたよぅな…眼差しを向ける柚葉…

諒は、その、柚葉の…髪や頬を、諒は指先でなぞり…

諒は、優しく…柚葉の名を口にした…


柚葉の口を戒めていた…ネクタイのリボンを解き…


「…俺と…一緒におぃで…っ」


諒の、その言葉に…、


『イヤです…っ
お願いだから…家に返してくださぃっ
どうして…、こんなコト…っ』


…と、泣きながら…、そぅ言った柚葉…


それでも…、諒の表情は、変わらない…

変わらない…どころか…、妖し気な笑みを浮かべていた…


『…お願い…っ、先生…っ
言うコト…、聞くから…っ』


そぅ…、泣きながら…懸命に、諒に懇願する柚葉…

…が、諒は…


「ソレは…、柚葉が…お利口でいてくれたらね…」


…と、口元だけ笑みを浮かべた諒…



その、肩越しに…金色に近い月が見えていた…
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