ギブス
その、柚葉の言葉に…

諒の瞳も…、微かに揺れ動いた…


「…俺は…っ」


学校での…昼休みの時や…、柚葉を車の中に監禁し、自分の自宅に連れ去って来た諒とは…明らかに違っていた…


その、諒を見つめている内に…柚葉の恐怖心も少しずつ…薄らいでいった…


「…俺は…、もぅ…誰も…失いたくはなぃ…」


諒の、その言葉に…

柚葉の涙も…止まっていた…


恐怖心よりも…、ソレ以上に強い想いが…生まれていたコトに…



柚葉は、自分を見つめる諒の頬に指先で触れ、その頬をなぞりながら…


『…あたし…、先生が…初恋だった…
あの日、逢った時から…好きだったんです…
人を…、殺した…だなんて、思えないくらぃ…
…綺麗な人だ…って、思ったから…
不思議なの…、今も…ソレは、変わらない…』


…と、緩やかな笑みを浮かべた柚葉…

そんな柚葉に、諒は驚きが隠せない…


「…柚葉…っ」


『…先生が…、辛そうだから…』


「……っ」


『…その…、昔の恋人を…殺してしまって…
辛そうで…、苦しそぅ…だから…
あたしを殺して…、生き長らえるのなら…殺してください…』


「…ゆず…っ」


驚きの余り…、言葉を失った諒…

諒の身体を抱き締めた柚葉…
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