ギブス
『……っ』


その、裕隆の言葉に…言葉を失った柚葉…


「…と、ごめん…っ
ヤだよな…っ?食事中に…っ」


…と、苦笑いを浮かべた裕隆…

ソレでも…、柚葉は、無言のまま…その瞳が空をさまよっている…


『…覚えてなぃよ…っ』


「そぅ…、だつたよな…っ
…ごめんっ」


その、兄の言葉にも…柚葉は、身動き1つしない…


『……っ』
【あの時…


6年前の…5月の夕暮れ、

目の前で起こった…不可思議な殺人事件…


あたしの目の前で殺された女の子の血液は…一滴も遺されていなかった…



“吸血鬼”…だったのかな…っ?


あの人…

もぅ…、顔も思い出せなぃ…っ】



あの…、少年のコトを思い出す度…

柚葉の胸の鼓動の速さが増していく…


まるで…、その少年に逢った瞬間に…

抗えない…鎖に捕まってしまったかのよぅに…
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