雪色野薔薇
午前5時、ミチルはケータイの着信音で目が覚めた。
だれだろう、こんなに朝早く・・・
「おはようございます。朝早くからすみません、生徒指導部の今岡です」
「今岡先生、なにかあったんですか?」
ミチルはいやな予感がした。こんな朝早くからしかも生徒指導部から電話が
かかってくるとはただ事ではない。生徒になにか起きたのだ。とミチルは
身構えた。
「実は昨夜10時頃、先生のクラスの田中美穂が若城市のマンションから飛び降り自殺
しまして・・・事件か事故か、判明できていないのですが、警察ではおそらく自殺だろう
と・・・」
「自殺という根拠はあるんですか?」
「その前に先生にお尋ねしたいんですけど、昨日、田中美穂に変ったことはありませんで
したか?」
「変ったこと・・・そうですね、授業中に持ち込み禁止のケータイをいじっていたんで、
それを注意した上、一時預かりました」
「ケータイは本人に返したんですか?」
「それが、昨日は先生もご存知のとおり、職員会議に学校訪問で他校の先生方がおいでに
なられていたので、会議が長引いてしまいまして、返す時間がなかったんです」
そうですか、と今岡は言い、きょうはマスコミが押しかけてくるから、授業にならない。
1時間目は全校集会にするから・・・といってケータイを切った。
ミチルは呆然とした。まさかケータイを取り上げたことが原因になっているのではないか
?そう思い、ミチルは自分を責めた。