ギャップ的恋愛論
そんな視線に、子供の俺が耐えられるはずもなく。
「父さん、ここから引っ越そうよ……」
何度お願いしたかわからない。
でも親父は、決して首を縦に振る事はなかった。
「お前だってこの家が好きだろう?
それに、いつ母さんと沙和が帰って来るかわからないしな……」
そう言って、毎回俺の頭を撫でるだけ。
“帰ってくる”
その言葉を、いつしか俺も信じるようになった。
まあ現実は、そんなに甘いもんじゃなかったんだけど。
帰ってくるどころか、母親は手紙一通よこしてこなかった。
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