ギャップ的恋愛論
咄嗟に出た嘘にしては、なかなか上出来だったらしい。
「はっ??マジで?」
拍子抜けしたような男の声が辺りに響く。
あたしは男の人の腕にしがみついたまま、キッと男を睨み返した。
「マジだから!
ついでに言うと、お兄ちゃん、空手の有段者なの!」
自分でもビックリするくらい、口からでまかせがスラスラ出てくる。
「……ちっ…、つまんねぇ」
あたし達を驚いた様子で見ていた男は、悔しそうに舌打ちすると、そう吐き捨てて踵を返して去って行った。
……た、た、助かったぁぁ
男の背中を見送りながら、あたしの体から一気に力が抜けていく。
ぺたりとしゃがみ込んだ地面は、昼間の熱気のせいか、まだじんわり熱かった。
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