ギャップ的恋愛論





不意にあたしの頭の中に、さっきの男の様子が浮かんだ。






汗ばんだ手、勢いよく歩く足、あたしを振り返った時の目。






確かに、小さい頃に読んだ“赤ずきんちゃん”に出てくる狼みたいに見えた。







“見えた”



そう、あたしは気づいていた。
気づいたからこそ、あんなに抵抗したんじゃないの?






「馬鹿じゃないもんっ!
ちゃんと逃げようとしたもんっ!!」






そうよ、あたしちゃんと危険を察知したんだから!







馬鹿呼ばわりされた事が異様にムカついて、あたしは口を尖らせて抗議する。







なのに……






「へぇぇ、あんな土壇場で…?
最初っから気づけよ、バ〜カ」







`
< 34 / 395 >

この作品をシェア

pagetop