ギャップ的恋愛論
不意にあたしの頭の中に、さっきの男の様子が浮かんだ。
汗ばんだ手、勢いよく歩く足、あたしを振り返った時の目。
確かに、小さい頃に読んだ“赤ずきんちゃん”に出てくる狼みたいに見えた。
“見えた”
そう、あたしは気づいていた。
気づいたからこそ、あんなに抵抗したんじゃないの?
「馬鹿じゃないもんっ!
ちゃんと逃げようとしたもんっ!!」
そうよ、あたしちゃんと危険を察知したんだから!
馬鹿呼ばわりされた事が異様にムカついて、あたしは口を尖らせて抗議する。
なのに……
「へぇぇ、あんな土壇場で…?
最初っから気づけよ、バ〜カ」
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