雷鳴の夜
「すみません、婦長」

扉から手を放し、私は階段を駆け上がる。

先にナースステーションへと戻る婦長の後へと続く私。

その背中に。

「……」

扉から漏れるあの冷気が、当たっているような気がした。

ひどく後ろ髪を引かれる思い。

あの扉には何があるのだろう。

誰も知らない地下病棟。

一体どんな世界が広がっているのだろう。

母さんに似て怖がりな私だけど、好奇心が強いのは…もしかしたら父さん似なのかもな…。

廊下を歩きながら、私はそんな事を思っていた。

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