雷鳴の夜
幸い、胸ポケットにペンライトをいつも持ち歩いている。

診察用に支給されたものだ。

これを灯りにして…。

片手にペンライトを握り締める。

今度は婦長も邪魔しに来ない。

ゆっくり。

ゆっくりと…。

私は鉄扉を押し開ける。

長年開閉されていない割には、軋むような音もさせず。

鉄扉は案外スンナリと、その閉ざされた入り口を開いた。

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