雷鳴の夜
すると突然。

「三池総一郎か」

ここまで無言に徹していたヴィクターが声を出した。

私は振り向く。

「ヴィクターさん、この人をご存知なんですか?」

「ヴィクターでいい。それから…」

無造作に頭を掻きながらヴィクターは続ける。

「その三池って男…ある筋じゃあ有名な男だぜ。ちょっと変わった研究をしているらしくてな…異端視されてた科学者だって話だ」

「異端視…」

もう一度、ネームプレートに視線を落とす。

「一体どんな研究をされていた方なんですか?」

私の問いかけに。

「さあな」

ヴィクターははぐらかすように笑って見せた。

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