雷鳴の夜
とても中まで入って確認しようなんて思えないほどの臭い。

私が躊躇していると。

「どれどれ」

私に代わってヴィクターが薬品保管庫へと入って行った。

顔をしかめる事もなく、薬品臭に躊躇する事もなく、平然と保管庫の奥へと足を踏みしめる。

裸足なのに、平気で薬品の瓶の割れた破片を踏みながら。

その姿に、違和感というには大きすぎるものを感じた。

この人…この強烈な臭いや、瓶の破片を何とも思わないのかしら。

何だか…痛みとか嫌悪感とか、そういうものをまるで感じていないかのようだった。

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