雷鳴の夜
ひとしきり奥まで確認してきて、ヴィクターが戻ってくる。

「この部屋にも何もなさそうだな。出口は更に奥にあるのかもしれねぇ」

彼がそう言うのだから仕方ない。

薬品保管庫を後にして、私達は更に奥へと進んだ。

…歩きながら。

「ヴィクター」

私は彼の名前を呼ぶ。

「足は…大丈夫ですか?」

「あぁ?」

彼は怪訝な顔をする。

「何で?」

「だって…さっき薬品の瓶の破片を裸足のまま踏んでいたから」

「ああ…」

彼は不敵な笑みを浮かべ、私の目の前でヒョイと足を上げて見せる。

「これでどうだ?」

…足の裏には、傷一つついてはいなかった。

< 53 / 150 >

この作品をシェア

pagetop