雷鳴の夜
「俺は頑丈なんだ」

そう言ってまた歩き出すヴィクター。

…釈然としない。

あんな鋭いガラス片を踏んで、何ともない人間なんているんだろうか。

それにあの薬品臭。

あの臭いを嗅いで平然としていられるなんて。

我慢できるレベルじゃない。

それほどの刺激臭だった。

鼻の息を止めていただけ?

そう言われてしまうと疑いの余地はなくなってしまうけれど…。

初めて遭遇した時の彼の言動といい、ヴィクターの不審な点は、いまだ拭いきれないのは事実だった。

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